ホーム > 院長のみみ便り > 生放送NHKラジオ「関西ラジオワイド」~季節の健康~出演 アレルギー性鼻炎
平成20年7月9日にNHKラジオ「関西ラジオワイド」~季節の健康~に、院長 松田 泰明が出演し、生放送された内容です。
まずアレルギーという言葉は、ギリシャ語のallos(変わった)という言葉とergo(作用・能力)という言葉に由来し、「変わった能力」という意味で命名されました。
もともと、人間は免疫というシステムを備えています。免疫とは「疫」を 「免れる 」という意味ですが、この場合「疫」とは主にウィルスや細菌などの微生物によって引き起こされる感染症のことを指します。つまり免疫は病原性微生物の人体への進入・増殖を監視し、発症を抑制する重要な働きを担っています。アレルギーとは、この免疫の働きがおかしくなり、本来人体にとって無害なはずのものに対して、ときに激しい反応が起きる状態を言います。この不都合な反応が鼻で起こった場合、アレルギー性鼻炎と言われるのです。アレルギー性鼻炎は症状の出る期間によって大きく二つに分類されます。
一つは一年中症状が続く通年性アレルギー性鼻炎で、もう一つは特定の季節に症状が出る季節性アレルギー性鼻炎です。
それは原因が、室内にあるハウスダストやダニだからです。数十年前からの住宅建設ブームに伴い住宅の建築様式が変化してきました。そして、室内環境を快適にするために高断熱・高気密化を進めてきました。つまり適度な温度と湿度が一年中保たれることになります。このことは、ダニにとっては繁殖しやすい環境になるのです。一方、換気が悪くなり、ハウスダストの増加にもつながりました。
それに加えて最近は室内でペットを飼う家庭が増えてきています。ネコ、イヌ、ハムスターなどの上皮・毛が原因となってアレルギー性鼻炎を引き起こすケースも目立ってきています。
季節性アレルギー性鼻炎の原因として多いのは、皆さんよくご存知のスギ花粉です。戦後スギの植林を進めたことで、スギ花粉の飛散が急激に増加したためです。日本人の5人に1人の割合でスギ花粉症の方がいるとまで言われています。
スギ花粉症は春の花粉症の代表ですが、スギ花粉の飛散が終わった後にヒノキ花粉がたくさん飛びますし、初夏からはイネ科の雑草、秋にもブタクサなどの雑草の花粉が飛びます。
はい。そして患者さんの数は年々増えてきています。ストレス、食生活の変化や大気汚染が原因ではないかと言われています。
また、昔に比べて私たちが生活する環境における衛生状態がよくなってきていますので、細菌などに触れる機会が少なくなり、免疫のバランスが崩れてきたためだと言う説もあります。低年齢化も進んでいて、3歳児でスギ花粉症を発症しているお子さんもいます。
くしゃみ・鼻水・鼻づまりですね。かぜの初期でも同じ症状が出ますが、かぜの場合は発熱などの全身症状が出たり、水のように流れる鼻水から粘調な、つまり粘っこい鼻水に変わっていき、1ないし2週間で治っていきます。
しかし、アレルギー性鼻炎では、水のような鼻水が続き、全身症状が伴ってきませんので、かぜとの鑑別ができると思います。
まず、原因を知ることが大切です。原因となる物質のことを抗原と言います。先ほど言いましたように症状のでる期間により、抗原を推測することはできますが、やはり検査によって抗原をはっきりと確定することが重要です。
検査としては、皮膚テスト、鼻に対する誘発テストがありますが一長一短がありますので、一般的には血液検査で抗原に対する特異的IgE抗体を持っているかどうかを調べることが多いですね。検査によって原因がわかれば、それを除去あるいは避ける事で症状を抑えることも可能になります。
ハウスダスト・ダニによるアレルギーであれば、掃除や布団などの寝具の洗濯による抗原の除去です。スギ花粉症では、外出の時にはマスク・めがねを着用する。飛散が多い時は窓を開けない。衣服についた花粉を玄関先で払い落とすなどです。
アレルギー性鼻炎は完全に治癒することは難しいですから、患者さんそれぞれの生活にあわせて、患者さんのQOLを上げるのが治療の目標になります。つまり症状を緩和し日常生活に支障のない状態を維持することですね。
一般には内服薬を使用します。最近は眠気などの副作用の少ない薬が多くなってきています。鼻づまりがひどい場合は外用薬として鼻噴霧用ステロイド薬を併用します。薬を使っても鼻づまりが治らない場合にはレーザーなどを使って手術をすることもあります。
また免疫療法として特異的減感作療法もあり、注射で行います。どんな治療方法を選択するかは症状や患者さんのライフスタイルによって変わってきます。治療法それぞれに長所短所がありますので、主治医とよく相談されるのが良いと思います。